「人の心」とその行動
人の一生には、様々な転機が巡ってまいります。その転機にどのように対処するかで、その後の展開が、大きく変わることがございます。過去の出来事を紐解いても、企業や組織の中で、その個人の判断が、その後に影響したことは多いのではないでしょうか。
例えば、今季、過去最高の決算(純利益で2兆1300億円)を計上予定のトヨタ自動車も、2010年には、世界生産1,000万台に手が届きそうになったとき、アメリカでの車の欠陥疑惑に襲われ、アメリカ議会の公聴会に社長が呼び出されました。この時、まさに企業としての絶頂期に、冷水をかけられた格好となりました。この公聴会を契機に、トヨタは、大きく変身し、規模を求めず着実な発展に、社会企業として、社会の中での大きな地位を獲得し、今日の発展を支えているのではないでしょうか。
あの公聴会の様子は、全世界に発信されました。まるで、罪人扱いのなかで、若き豊田章男社長が、正々堂々と逃げることなく、真正面から自社の急成長への反省も踏まえて、謙虚に淡々と自社製品について、一生懸命説明している姿は、見るものにひと時の爽快感を与えたのではないでしょうか。もちろん、これは自社の技術に対する自信と、従業員への信頼が、そうさせたと思います。(因みに、欠陥問題は、その後装置欠陥なしで解決)
ここから私たちが学ばなければならないのは、人は、その絶頂期は決して長くは続かず、普段の努力が、いかに大切で、常にいかに「謙虚」でいられるかと言う事ではないでしょうか。ともすれは、絶頂期に人の心は、「おごり」と「過信」になるものです。この時、いかに自分をコントロールできるかが、その後に大きく影響するのではないでしょうか。私も、若い頃、地方銀行から出向されていた若き上司から、「人の2倍の仕事をしたら、3倍「謙虚」になれ」と教えられました。今、まさに、その言葉が必要な世の中なのではないでしょうか。