「期待される横浜市の事業所数(就業人口)増加の施策」
今週は、先週に引続き、当社「羅針盤セミナー:賃貸住宅収益リスクⅢ」で取上げた賃貸住宅マーケットの状況について、横浜市を取り上げます。
住宅土地統計調査(H.25.10.1現在)による横浜市の賃貸住宅の空室率は、全体で15.8%ですが、最も空室率が高かったのは、金沢区(20.2%)、次いで磯子区(19.9%)、西区(18.7%)となっております。また、最も低かったのは、都筑区(11.7%)ついで戸塚区(11.9%)、泉区(12.3%)となっております。(空室率については、当社算出)これらの数値は、社会保障・人口問題研究所の発表している将来人口の予想と概ね一致しております。即ち、将来人口増加の予想される横浜市北部の地域(都筑区、港北区、鶴見区等)では、空室率は低く、逆に人口減少が予想される市の南部では、空室利率が比較的高くなっております。
一方、ミクロ分析による横浜駅最寄りの賃貸住宅空室状況は、築20年以内の物件に限ったとしても、その88%が徒歩10分超の物件で占められ、徒歩5分以内の物件は0.6%に過ぎませんでした。このことは、最寄り駅からの徒歩時間が空室率を大きく左右することを示しております。
上記を踏まえて、従来から言われている横浜市の課題の一つは、事業所数が少ないことです。その事業所数は、東京23区の22.9%にすぎず、従業員300人以上では、東京23区の13.3%に過ぎません。(平成24年 経済センサス統計)そして、その就業人口数は、生産人口の58.8%に留まるのに対して、東京都23区では、123.3%となっており、実数で100万人近くが、他の市区町村で働いていることになります。逆に考えれば、人手不足が進む中、豊富な労働力が存在するのです。
待機児童の問題解決や様々な行政サービス改善で、全国屈指の実績を誇る横浜市ですが、少子高齢化、職住接近の状況の中で、この問題の解決こそが、賃貸住宅の空室率の改善のみならず、将来の都市間競争に大きく寄与するものと考えられ、またその期待も大きいものと思われます。 以上